◎〔アナリストの目〕WTI原油、ホルムズ海峡の緊迫化

コモディティ・アナリシス

2019/06/18 09:04

◎〔アナリストの目〕WTI原油、45~60ドルのレンジ相場続く=吉中晋吾氏

世界の石油需要の鈍化と米中貿易摩擦の激化を背景に50ドル割れ目前まで売り込まれたニューヨーク原油(WTI)相場も、6月の1週目以降は、海上交通の要衝であるホルムズ海峡の緊迫と供給懸念を材料にいったん下げ止まり、次の展開をうかがうため穏やかなレンジ相場を形成している。世界と米国の石油在庫は増加傾向にあり、ホルムズ海峡の地政学的リスクだけを材料に上値を追うには厳しく、一方、下値余地が限られる40ドル台を目指し突っ込み売りを仕掛ける理由も乏しい。

足元は50~55ドルのレンジを、短中期は、月末に控える石油輸出国機構(OPEC)総会と中東情勢を眺めつつ上下の振れ幅を45~60ドルのレンジで想定しておきたい。内部動向を整理すると、まず米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉動向に関しては、ピークアウトした4月23日ごろを境に、投機筋(Managedmoney)はストレートで買い玉を手じまい、新規の売りを増加させる構図となっている。プレーヤー比率に関しては、2月末以来、ネットで売りが買いを上回ったことからセンチメントが弱気に傾いたとみる向きもあるが、このパターンは、しかしながら、市場の下げ止まり、または反発を示唆していることも多々ある点は留意しておきたい。上半期の投機筋の動向としては、上限下限は45~65ドル、中間レンジは50~60ドルでポジションを回転させる傾向にあり、現状は中間レンジのボトムに近い値位置ということで、再びロングを増加させるタイミングと考えることもできる。

次にスプレッド/曲線の動向であるが、基本的にはWTI原油に呼応する推移となっており、新たな展開に備え緩やかなレンジを形成している。ただ、直近相場では、ホルムズ海峡におけるタンカー攻撃の報を受け、WTI原油より先にブレント原油のスプレッド市場が買いで反応し、その後、原油市場全体を底上げする流れにつながっており、現状、足元では緩やかな上昇の兆しも見えつつある。市場参加者の心理としては、ホルムズ海峡の緊迫化より需要の鈍化に意識が傾いている向きもあり、当面は上記レンジを意識した調整相場が続くと予想する。
出典:時事通信社
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