◎〔アナリストの目〕WTI、サウジアラビアをめぐる地政学的リスク

コモディティ・アナリシス

2018/10/24 07:07

◎〔アナリストの目〕WTI、65~75ドルのレンジか=吉中晋吾氏

ニューヨーク原油(WTI)は、米原油在庫の増加や石油需要見通しの下方修正などを背景に、10月3日に76.90ドル(中心限月12月きり)の高値を付けた後、下落に転じている。サウジアラビアをめぐる地政学的リスクが警戒される中、一時は原油価格急騰に対する思惑がWTIを下支えしてきたが、足元では、米原油在庫増、米シェール主要地区の原油生産量の増加など、実際の「数字」が材料視され、70ドルを割るに至った。下値余地としては65ドル台も視野に入るが、安値は拾われ、当面は65~75ドルのレンジ相場とみる。

以下、内部要因に基づく動きを二つ確認しておきたい。

まずはCFTC建玉動向。直近データ(10月16日)では、投機筋のネットロングが2017年10月24日以来、約1年ぶりに50万枚を割った。通常、WTIと投機筋ネットポジションは連動する傾向にあり、17年11月終盤以降、投機筋のロングが原油価格をけん引する格好で上昇相場を形成してきた。しかし、18年4月ごろにネットロングがピークになった以降、投機筋は買いの手を控え、手じまい売りを中心としたポジション調整のスタンスをとっている。その時点のWTIのレンジが65~70ドルに該当するため、当該レンジが投機筋からみた一つの分岐点であると言える。

二つ目は、スプレッドの存在が挙げられる。10月17~18日を境に期近限月がコンタンゴとなり、23日現在で19年5月きりまでがストレートでコンタンゴを形成している。プロのトレーダーらが、期近中心に過熱気味な売買を展開しているため、若干の行き過ぎ感も否めないが、この展開がイコールで「売られ過ぎ」であるかを判断するには、もう少し状況を精査する必要がある。ただ、仮に、現在のコンタンゴの形状と限月間の価格差水準が正常であれば、WTIにはもう少しの下げ余地がある。そうでなければ、コンタンゴは再び縮小傾向になると考える。
出典:時事通信社
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