◎〔アナリストの目〕WTI、利益追求への警戒感

コモディティ・アナリシス

2021/03/01 11:58
◎〔アナリストの目〕WTI、56~66ドルのレンジで調整=吉中晋吾氏
 2月以降、ニューヨーク原油(WTI)は、中国の需要回復見通しや米国内在庫の減少などを背景に約17%の上昇を演じることとなったが、足元、加速するリスク資産の楽観度を修正する局面にある。

 WTIを取り巻く内外材料のバランスは、一定レベルの下落を伴う修正を示唆している。リスク資産への楽観度が増進する中、バンク・オブ・アメリカが公表したグローバルファンドマネジャー調査では、現金比率は2013年以来の低水準となり、2月最後の週では、利益追求への警戒感からリスクオン資産が幅広く売られることとなった。

 WTI市場においても、節目となる60ドルの水準からは、投機ポジションは静観状態となっており、また先物市場における長期曲線も一時的なガス抜きを必要とするレベルにあり、現状、上述の内部・外部要因を背景として、一時的な修正局面にあると言える。

 ◇売りに傾けるトレーダーも

 米先物取引委員会(CFTC)の建玉から見る投機筋の動向を確認したい。前回分の執筆(1月26日)では、「全体のポジション量が大きく変化していないにもかかわらず、新たなリスクテーカー(買い手)が増加している。つまり、全体のセンチメントにおいては投機のリスクテーク意欲が消えていないものの、テクニカル的には均衡化が崩れる動きも予想される」と述べ、テクニカル的な下落修正を示唆したが、直近のデータ(2月23日)では、一部マネージドマネーのプレーヤーが、買方から売方にシフトしたことが確認できる。建玉水準に変化はないものの、内側では温度差の異なる動きとなっている点は留意しておきたい。

 投機ポジションに関しては、全体像(ネットポジション)に対して、買方と売方(内部)のどちらがカギになるのかを知ることが肝要であると考える。同データは、市場を取り巻く複数の要因を思慮深く分析した上で利用する必要があるが、例えば、昨年11月から続いた強気相場において、“ショート”の存在とその踏み上げが段階的な上昇相場を形成する上での肝になった側面がある。現状、投機建玉はネットロングであるが、ネットベースの推移を把握しつつ、その内側の動向もにらみつつ全体の流れを知ることが重要であると考える。

 若干、テクニカル的な表現であるが、これらはトレンドとインジケーターの関係に類似しているかもしれない。現状、市場の日足は(短期、中期、長期の移動平均線がきれいに並ぶ)パーフェクトオーダーを形成しており、道中、インジケーターが数回ほど押し目(転換点)を示唆する場面がチャート上でも確認できるが、トレンドが投機ネット、インジケーターがポジション内訳の増減、といった関係性に落とし込むこともできると考える。

 ◇期近主導で売られる可能性高い

 先物曲線に関しては、昨年5月ごろより続いてきたコンタンゴの引き締まり、フラット化、そしてバックへの段階的な変化も、今年2月中旬ごろをピークに、一つのサイクルを終えたように見受けられる。「上昇サイクルの持続」の可能性を否定しているわけではないが、少なくとも、張り詰めた状態にある先物曲線において一定の内部修正は必要であり、全体像のバランスを勘案し、期近限月主導で売り調整される可能性が高いと考える。

 若干狭い範囲になるが、トップサイドが66ドル、ダウンサイドは56ドルのレンジを予想する。
出典:時事通信社
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