2023/3/28 10:27
◎〔アナリストの目〕WTI、65~75ドルレンジで推移=吉中晋吾氏
ニューヨーク原油(WTI)は、3月15日、銀行セクターにおける不確実性等を背景に、2021年12月以来、約1年3カ月ぶりの安値を付けた。
金融不安を背景に、原油を含むリスク資産は不安定な値動きが続いている。現状、ハト派的な米連邦公開市場委員会(FOMC)、ロシアのベラルーシへの戦術核配備計画の報を背景とした地政学的緊張等がボトムを支え、戦略石油備蓄(SPR)の補充に数年かかる可能性、ロシアの市場への原油供給等が上値を抑える構図となっている。
脆弱(ぜいじゃく)な金融システムを嫌い市場参加者も手控えの傾向にある。
当面、65~75ドルレンジで推移するものと予測する。
◇金融当局の動き嫌い、手控え
米連邦準備制度理事会(FRB)は21~22日のFOMCでは0.25%ポイントの利上げを決定。予想されたタカ派的なスタンスが後退したことを受け、金融政策との連動性が高い2年債利回りは4%を割り込むこととなった。利上げ観測後退とドル安進行を手掛かりにWTIも一時的な巻き戻しの向きも見られたが、イエレン米財務長官が金融安定監視評議会(FSOC)の緊急会合を開催するとの報を受け、市場の複雑化を嫌う市場参加者の撤退とともにセンチメントもトーンダウンすることとなった。
◇ファンド、ショートに動く
米商品先物取引委員会(CFTC)の投機ポジション(以下オプション含む)は、マネージドマネーの新規売りが目立つ。リスクオフの際は、転売によるショート増の傾向が強いが、シリコンバレー銀行(SVB)破綻余波でリスク資産が不安定になる中、原油市場では、投機が現状を好機ととらえ新規ショートに動いた。つまり、ヘッジファンドのシナリオではもう一段安も想定内と考えられる。
一方、直近では断続的な巻き戻しも見られており、積み上げたショートを部分的に解消した可能性も考えられる。投機が深追いを避け、ショートを清算するのであれば、早い段階での75ドル台への回復も難しくはないと考える。(了)
※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表
出典:時事通信社
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