供給逼迫(ひっぱく)懸念と需要減退懸念が価格動向を相殺

コモディティ・アナリシス

2023/08/22 12:18
◎〔アナリストの目〕WTI、75~85ドルレンジで推移=吉中晋吾氏
ニューヨーク原油(WTI)は、6月末から続いた上昇相場も一服、足元、中国問題の深
刻化を背景に価格修正のタイミングにある。
中国の不動産危機が深刻化し、中国の石油需要への懸念が高まる中、米国では、政策当局
がインフレとの戦いを継続するとの思惑からドル高が進み、6月末からのWTIの連騰も
トーンダウン。しかし、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPEC
プラス」の減産による供給逼迫(ひっぱく)懸念も根強く、現段階では80ドルが分水嶺(れ
い)となっている。
◇下落の背景は内部調整の売り
WTIのピークアウトに関して中国の景気低迷や米利上げを背景とみる向きも少なくな
いが、先物曲線が価格に先行して転換期を示唆していた点にも留意しておきたい。
8月初旬以降、長期先物曲線が水準点を超過した状況下にあり、市場ではネガティブなイ
ンパクトに備え転売や新規売りが先行していた。米商品先物取引委員会(CFTC)の投機
ポジション(以下オプション含む)においても、マージドマネーは長らく保有していたロン
グポジションの一部を手じまい、また一部は新規ショートに転じた。
今回の価格修正の背景には、先物曲線が転換期を示し、中国問題がトリガーとなり、価格
修正に転じた流れが考えられる。
俯瞰(ふかん)的には、マーケットのスタンスは依然ニュートラルである。上述で示した
通り供給逼迫(ひっぱく)懸念と需要減退懸念が価格動向を相殺する形となっており、これ
らは市場参加者のセンチメントを測るCFTCの週次リポートではトレーダーが変動して
いないことからも確認できる。
夏枯れ相場で市場の流動性が細る中、プレーヤーたちは中国問題とジャクソンホール会
議を見極めたいとの思惑から、しばし様子見のレンジ相場が続くと考えられる。
レンジは75~85ドルを予想する。(了)
※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表
http://investorsio.com/
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