◎〔アナリストの目〕WTI、期近主導で調整局面に

コモディティ・アナリシス

2022年 6月20日11:13 am

◎〔アナリストの目〕WTI、売り優勢の90~110ドルに=吉中晋吾氏

ニューヨーク原油(WTI)先物相場は、6月中ごろ以降、米国の積極的な利上げが景気後退を引き起こし、燃料需要が減少するとの懸念から軟調な推移となっている。また、OPEC(石油輸出国機構)プラスの将来的な方針をめぐる先行き不透明感も市場のストレスを高め、参加者たちの手控えの要因にもなっている。

内外要因はネガティブな側面が強く、市場の一段安を招くことも考えられる。レンジは売り優勢の90~110ドルを予想する。

ブレーク・イーブン・インフレ率の水準も留意しておきたい。米国債とインフレ連動国債の利回り格差を示し、インフレ期待を反映するブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は、5年と10年でいずれも、ウクライナ侵攻前の水準まで低下している。債券投資家もインフレヘッジの解消に動くなど、一部ではインフレ期待の沈静化も見受けられる。WTI市場においても、6月初旬のピークアウト以降、戻りは断続的な売りでキャップされる傾向にある。

◇投機、消極的

米商品先物取引委員会(CFTC)における投機ポジションは、5月中ごろ以降はネットロングと取組高ともに減少傾向にあり、市場参加者のセンチメントを測る上での参考指標となるトレーダー数も同様に買方減の流れで推移している。OPECプラスの将来的な方針をめぐる先行き不透明感に対するリスク回避的な側面もあるが、一方では証拠金の高騰も手控えやポジション減の背景になっている。

ウクライナ情勢以降、スプレッドも含めた証拠金率が高騰したことから、アクティブなトレーダーたちは他のより効率的な運用先を求めWTI市場から撤退している。

◇期近主導で調整局面に

スプレッドは期近限月主導で売り調整される可能性が高いと考える。6月中旬以降、WTIは20ドル超の下落を演じたものの期近の下げは限定的で、むしろ期先限月主導で売られ逆ざやがさらに拡大することとなった。下げ渋る期近をいぶかしむ向きもあるが、期近限月においては、上場投資信託(ETF)のロール、インターコモディティーでの相対的な需要等々の複合的な要因が折り重なっており、曲線という一部の内部要因だけを切り取り原因を分析するのは困難と言えるかもしれない。

ノイズが排除された期先が参加者の予想する期待値なのであれば、期近限月も時間の経過とともにさや寄せするものと考える。(了)
出典:時事通信社
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※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表

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