◎ゴールド、希少性の原理

コモディティ・アナリシス

2020年 9月10日2:41 pm

◎希少性の原理背景に底堅く推移

マネーサプライが膨張する中、希少性の原理を背景にゴールドが底堅く推移している。価格がワンサイドで上昇し始めると、無国籍通貨としての希少性に「買わざるリスク」のバイアスも加わり、投資における判断能力を鈍らせる傾向にある。“今”は「機会損失」から逃れるための競争が行われている側面にも留意する必要がある。

ロングを保有しているトレーダーを例にすると、トレーダーの頭の中に映っているのは、利益確定のターゲットではなく、買った場所の“厚み”。つまり、何かを失うことに対する意識の方が先に働くメカニズムになっており、これらは、短中長期といった時間軸、個人や組織の運用者といったスタンスに関係なく共有している傾向と言えるかもしれない。理論から飛び抜けた部分の評価のされ方には注意が必要である。

◇テクニカル好む参加者が増加傾向

“テクニカル”というと、「完全否定派」または「すべての領域を織り込む派」に分かれる傾向にあるが、直近のゴールド市場はテクニカルに対する感度は高いと言える。

昨今、投資アプリを経由した売買が盛り上がる中、Youtubeでは新米トレーダーを指南する“テクニカル系インフルエンサー”が数多存在しており、ゴールド市場においても、新米がこれら師のテクニックをまねて取引する傾向もある。これら風潮に対して「プロまがいの情報をうのみにするのは危険だ」と警鐘する向きもある。

確かに、適当なレクチャーが大半なのは事実であるが、エデュケーションとしての「資産運用」、自分の存在を賭けて真剣に遊んでいる「投機」、これらの話は別にして考える必要があり、多くの場合において話している本人ですら投資・投機を混同していることがある。仮に「投機」について話しているのであれば、投機の世界は理論武装した人間が関与できない「異種格闘技の真剣な遊びの場」であり、プロアマの概念が存在しないという事実を、教える側、教えられる側の双方が肝に銘じておく必要があると考える。

◇考慮すべき二つの投資スタンス

簡潔に、ゴールド投資において考えるべき二つのスタンスを提示したい。

一つはドルコスト平均法。「運用者が当たり障りのない回答をしやがって」という方もいらっしゃると思うが、相場師だからこそ“平凡な投資”の尊さを実感している。個人投資家の方も同様に、資産運用の一定の部分は、無条件で“ゴールド枠”のようなものを設ける必要があると考えている。可能であれば、自身のポートフォリオの5%前後は「自動」で保有するようなシステムにした方が良いと考える。

もう一つは「ワンショットの買い」。ワンショットの買い場の条件に関しては、実質金利から導き出された理論値に対して下振れしたタイミングが一つ考えられる。「積み立て」を退屈に感じる人は、ワンショットの買いを併用することで上述の「希少性の原理」の締め付けから解放されるかもしれない。

日本の投資家は、やれ受け身、リスクに対して臆病、金融リテラシーがない、といった表現でやゆされる。一部の印象操作もあるだろうが、筆者の知る限り、普通にリスクテイカーやスマートな投資家は多く存在する。そのようなタイプの投資家は、上の要領で一定のロットを投下する方法も一つかもしれない。

ただ、ゴールド市場において「ワンショットの買い」の好機が訪れるのは数年に一度の話であり、直近のゴールド市場においては、2016年、19年、20年の一部と数える程度であった。通常はドルコスト平均、要所はワンショットで積み増すイメージが良いと考える。

◇ゴールドに振り分ける資金は何%か

ポートフォリオの中で、ゴールドに振り分ける資金は何%か。仮にトータル10%であれば、その中の何%をワンショット用に待機させておくべきなのか。個人的には、ゴールドレポートで日々執筆されている方々が強調するポイントを重層的に組み立てることで最適解が得られるものと考えている。(了)
出典:時事通信社
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