2020/06/29 10:06
◎〔アナリストの目〕WTI原油、35ドル割れも想定=吉中晋吾氏
新型コロナウイルスの感染第2波が懸念される中、ニューヨーク原油(WTI)は内外材料がバランスされた適温相場を維持した 状態にある。足元のWTI原油は、需要回復期待と米国原油生産の増加見通しでボトムトップが形成されており、基本、他市場とは距離を 置いたセンチメント中心の手口となっている。
マーケットでは、ウイルス感染急増を背景にリバランスの動きとなっており、WTI原油市場においても、深度と期間を予測する ことは難しいが、調整の波が来ると考える。
◇「第2波」
第2波が警戒されながらも長らく上昇基調にあったNYダウなどの主要3指数であるが、恐怖指数(VIX)スプレッド等の推移 を警戒し、ようやく「第2波」を意識した調整(売り)が進行している。これまで、自律中心の商いであったWTI原油市場においても、 上の流れを警戒する中、コンタンゴの拡大や、インターコモディティー比での圧迫感などを背景に利益確定(転売)の動きが強まってい る。
全体像から見たWTI原油の「動向の質」は、3~4月相場の真逆、つまり、イールドの変化、主要株式の調整、原油の調整の流 れになる。上述の通り、深度と期間を測ることは難しいが、下をうかがう展開も見据えキャッシュを厚くしておくのも一つと考える。
◇投機参加者は減少傾向
米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉動向に関しては、特にない。当ぎりベースで20ドル台(あくまで当ぎりベースの話、 実際の手当ての場所は別)の水準からバイホールドしてきたトレーダーも、40ドル手前では利益確定に動く傾向にある。マネージドマ ネーの参加者自体は減少傾向にある中、ネットが高止まりしていることは留意しておきたい。
ちなみに、直近の米エネルギー情報局(EIA)在庫統計に関して、微増(+144万2000バレル)であったにもかかわら ず、そこそこの下げ幅を演じたことから背景をいぶかる向きもあったが、伏線として、イールドが先行(反落)し、インターコモディ ティーもWTI原油が高止まり状態の中、クラックも反落したことによって振れ幅が大きくなったものと考える。
◇下値に備える
価格予想自体に興味がない。適温相場が続くこともあれば、35ドル割れの展開も普通に考えられるだろう。ただ、下を探る展開 を想定し、資金を待機させている運用者は少なくないと考える。一方で、証拠金は高止まりのまま放置され、データ受信料だけは税金のよ うに吸い上げられる状況の中、原油市場から資金を引き揚げるトレーダーがいることも事実。これらを背景とした参加者の減少傾向が、直 近の適温相場につながる一因になったことも理解した方が良い、と考える。
出典:時事通信社
本記事・画像・写真を無断で転載することを固く禁じます
コメント