◎〔アナリストの目〕WTI、期近主導での調整局面

コモディティ・アナリシス

2021/01/26 08:30
◎〔アナリストの目〕WTI、46~60ドルのレンジで推移=吉中晋吾氏
 昨年11月初旬以降、ニューヨーク原油(WTI)は、新型コロナウイルスのワクチン開発に対する期待感などを背景に堅調に推移してきたが、感染者数が急増する中、一時的な調整局面を迎えている。

 WTIを取り巻く内外材料のバランスは、中長期においては依然上向きにバイアスがかかった状態に見受けられるが、コロナ感染拡大の抑制で制限措置が強化される中、特に、中国における感染拡大が需要への懸念材料として警戒されており、これらは、1月中旬以降続く価格調整の主要因となっている。また、国際エネルギー機関(IEA)も、ワクチン接種の本格化と石油需要の回復は今年後半になるとの見方を示すなど、原油市場においても、当面の分岐点である54ドルから横ばいの状態が続いている。ただ、先物市場における投機ポジション動向からも確認できる通り、リスクテーク意欲自体が消えたわけではなく、今後、一段高も考えられる。

 若干広いレンジになるが、ダウンサイドは46ドル、トップサイドは60ドルのレンジを予想する。

 ◇テクニカル的な修正もあり得る

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉から見る投機筋の動向を確認したい。2020年11月初旬以降、順調に積み上がってきたネットロングは、同年12月中頃を境に横ばい状態が続いているが、マネージドマネーに関しては、新規玉を中心にロング継続中であり、また、トレーダー数に関しても買方が増える流れとなっている。

 ただ、上述の通り、中国における感染拡大やコロナワクチン接種の遅れが上値を抑える状況下において、増加傾向にある買方の存在が価格下落のトリガーに切り替わる可能性があることは留意しておきたい。全体のポジション量が大きく変化していないにもかかわらず、新たなリスクテーカー(買い手)が増加している。つまり、全体のセンチメントにおいては投機のリスクテーク意欲が消えていないものの、テクニカル的には均衡化が崩れる動きも予想される、という視点になる。

 これらトレーダーの動向やセンチメントの変化に関しては、若干現場寄りの目線になるが、各市場の引け間際で日々展開されるプレーヤー間の構図に似ている。時間を味方に付けたプレーヤーに対して、その他大勢のプレーヤー間でリスクが受け継がれ、価格の方向性が段階的に形成されるが、直近の原油市場では、高止まりした水準で一連の(上述の)流れとなっていることから、いわゆる均衡化の崩れにつながる可能性もあると考える。あくまで一つの予測にすぎないが、相場とは備えであり、留意しておくこと自体損にはならない。

 ◇期近主導での調整局面を予想

 前回のリポートでも言及したように、米大統領選を境に株式市場に資金が流入する中、原油先物曲線も、コンタンゴの引き締まり、フラット化、そしてバックへと段階的な変化を見せてきたが、昨年11月23~24日ごろから始まった曲線の一連の流れも、直近では高止まり傾向にあり、期近主導での調整局面が予想される。

 若干広いレンジになるが、46~60ドルのレンジを予想する。
出典:時事通信社
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 ※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表

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