◎〔アナリストの目〕WTI、先物曲線とテールリスク

コモディティ・アナリシス

2021年 8月3日2:51 pm

◎〔アナリストの目〕WTI、68~78ドルのレンジで推移=吉中晋吾氏

ニューヨーク原油(WTI)は、7月初旬のピークアウト以降、リスクオンとオフの切り替えが激しい値動きを演じている。

OPEC(石油輸出国機構)プラスが、協調減産を8月から12月まで毎月日量40万バレルずつ縮小することで合意したものの、世界的な需要回復を背景とした基礎的な需給バランスが相場の底を支える構図となっている。

新型コロナウイルスは、上値をキャップする懸念材料ではあるが、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を受け、米国株の強気観測が根強い中、昨年度同様の封鎖処置が行われる可能性は低いとみる向きもある。

上値を追うほどの動機はないが、押し目を拾われる流れにも変化はない。トップサイドは78ドル、ダウンサイドは68ドルのレンジを予想する。

◇悪材料は拾われる

上述のファンダメンタル同様、直近のWTI市場では、オクラホマ州クッシングの在庫減少、7月FOMCとFEDウオッチから見る利上げ予想の後退を背景としたドル安、またイランの核合意立て直しに向けた協議の難航など、基本、相場の支援材料が多い傾向にある。昨年2月以来の低水準となった7月の中国製造業購買担当者景気指数など、タイムリーな悪材料がヘッドラインに流れるものの、行き過ぎの場面は拾われるセンチメントとなっている。

とはいえ、市場全体が楽観に包まれているわけではなく、73~75ドルレンジの分水嶺(れい)では、投機のポジションもいったん清算の格好となっている。

その投機ポジションであるが、6月29日付のデータを境に、ネットロングと買方が減少傾向にあり、内訳は転売中心、値位置は73ドル平均となっている。COT建玉を裏付けとした投機動向の一つの傾向として、プラスマイナス5ドルで“動く”向きもあり、これらを背景に、筆者のレンジも73ドルプラスマイナス5(68~78ドル)となっている。

投機の足跡を記録することに関して、これらは、あくまで一つの材料、視点にすぎないが、市場の均衡化は実弾に基づくものであり、市場に参加する側であれば、それら動向は重要なツールであると考える。

◇先物曲線とテールリスク

先物曲線(期近と期先の価格差)に関しては、基本、直近の「アナリストの目」で指摘してきた流れに変化はない。過去の内容を改めてサマライズすると「上昇サイクルの持続の可能性を否定しているわけではないが、少なくとも張り詰めた状態にある先物曲線において一定の内部修正は必要である。ただ、銘柄ごとで参加者タイプが異なれば価格のリアクション(曲線の伸縮のタイミング)も異なる。素直にオーバーシュートする市場もあれば、銅のようにスクイーズが終了した後、緩やかな下げに転じる傾向の市場もある」となっている。

要は機械的に修正する部分もあれば、「内部要因(期近)」で“曲がる”こともあるが、回帰分析の視点では、大方、曲線は日の出入りの周期のように動き、同化と調整を経てレンジに収まる傾向にある。

結局のところ、テールの部分が相場なのであれば、テールのリスクと時間の概念を読み解く上でも、これらに起因する投機足跡を認知しておくことが一つのカギになると考える。(了)
出典:時事通信社
本記事・画像・写真を無断で転載することを固く禁じます

コメント

タイトルとURLをコピーしました