2022年 8月20日
◎〔アナリストの目〕WTI、8月は80~95ドルのレンジに=吉中晋吾氏
ニューヨーク原油(WTI)は、世界的な景気後退による経済成長やエネルギー需要への懸念を背景に、ロシアのウクライナ侵攻前の水準まで切り下がることとなった。ただ、足元の値動きに関しては、8月5日に発表された7月米雇用統計が好調な内容(非農業部門の就業者数が前月比52万8000人増、失業率は3.5%に低下)となったことから、一時的にリセッション懸念が和らいだ状態にある。
市場は既に夏枯れ相場の雰囲気も感じられるが、流動性の低さによるボラティリティーの高まりから時折イレギュラーな値動きも見られる。
8月は80~95ドルのレンジを予想する。
◇95ドル水準、買方の心理冷ます材料重なる
分水嶺(れい)となる95ドルの水準では買方の心理を冷ます材料が重なる。直近の米エネルギー情報局(EIA)週間在庫統計は、アナリスト予想(60万バレル減)に反して450万バレル増加となり、分岐点となる95ドルでの戻り売りを誘うこととなった。米商品先物取引委員会(CFTC)における投機ポジションは、やはり95ドルの水準では転売(戻り売り)の手口となっており、不透明な市場環境の中、同水準が買方のポジション解消のコンセンサスとなっている側面もある。
また、拡大していた逆ざやも95ドル水準から緩和傾向にある。前回のアナリストの目(7月4日)では「スプレッドは期近限月主導で売り調整される可能性が高い」として、逆ざや緩和のプロセスについて言及したが、やはり逆ざやも95ドルの水準から加速度的に値差を縮小させている。
上記の通り、市場は既に夏枯れ相場の雰囲気もあり、しばしレンジ相場が続くものと考えるが、ボラティリティーの高まりに伴うイレギュラーな値動きには注意したい。(了)
出典:時事通信社
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