2021/04/05 10:37
◎〔アナリストの目〕WTI、57~67ドルのレンジで調整=吉中晋吾氏
3月中旬以降、ニューヨーク原油(WTI)は、欧州のロックダウン(都市封鎖)措置による市場回復への懸念から大幅な調整売りを演じることとなった。足元、方向感のない月末のリバランスを経て、新たな局面をうかがう段階にあるように見受けられる。
2月以降、中国の需要回復見通しや米国内在庫の減少などを背景に底堅く推移していたが、過熱する利益追求の裏側で、節目となる60ドル超えの水準では投機筋が深い追いを避け、また先物市場における長期曲線も一時的なガス抜きを必要とするレベルにあった。結果として、欧州のロックダウン措置がトリガーとなり、他のリスクオン資産とともにWTIも売られることなった。
現状、当面の調整局面にある。トップサイドは67ドル、ダウンサイドは57ドルのレンジを予想する。
◇投機筋、リバランス中心の手口
米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉から見る投機筋の動向を確認したい。2月中旬には一時的に売方に回るトレーダーも見受けられたものの、ネットポジション量には大きな変化はなく、また、センチメントを測る物差しの一つであるトレーダー数の変化も限定的なものとなっている。
3月末には派手な値動きとともに売り買い両サイドの手じまいが行われたが、これらは、基本、月末のリバランスを背景とした方向性を伴わない調整であり、別の視点では、ポジションを残すことができる個人投資家にとっての“機会”となった側面もある。
前回分の執筆(3月1日)では、「上昇サイクルの持続の可能性を否定しているわけではないが、少なくとも、張り詰めた状態にある先物曲線において一定の内部修正は必要であり、全体像のバランスを勘案し、期近限月主導で売り調整される可能性が高いと考える」と述べ、これらを理由に、レンジを「トップサイドは66ドル、ダウンサイドは56ドル」と推測した。トレンドの持続性を予測するのは困難な時期ではあったが、少なくとも“調整”が意識される段階であったとの解釈であり、実際のマーケットもおおむね推測に沿ったレンジで調整することとなった。いったんは落ち着いた先物曲線であるが、現時点では、いまだ高い水準に位置していることは留意しておきたい。
※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表
出典:時事通信社
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