2023/05/30 09:50
◎〔アナリストの目〕WTI、当面は65~85ドルレンジ=吉中晋吾氏
ニューヨーク原油(WTI)先物相場は、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成するOPECプラスを控え、ポジション調整主導の展開となっている。
米債務上限問題は合意の運びとなったものの、「原油需要増への期待と追加利上げによる経済圧迫」といった強弱材料に挟まれ、引き続き方向感を欠く展開が予想される。当面、65~85ドルレンジを予想する。
◇外部環境、強弱拮抗
現状、WTIは強弱両方の外圧を受け、サイドウェイを余儀なくされている。
先週までのWTIは、米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策目標である4月米個人消費支出(PCE)の上昇、米債務上限問題を巡る合意への期待、また、直近の米連邦準備制度理事会(FRB)高官のタカ派的発言などを受け、短期金利の織り込みとドル高が進行し、市場の上値も抑えられる格好になった。米債務不履行(デフォルト)の回避は、原油需要増等のサポート要因となる一方、支出抑制による下降リスクに対するネガティブ要因になるとの見方もあり、足元、これら要因の外圧を受け、こう着状態が続いている。また、直近ではBEI(期待インフレ率)が巻き戻し基調にあり、再び物価が上昇すると予測する向きに焦点が当たりつつある点は留意しておきたい。
◇投機ポジション、ネットロングが減少
米商品先物取引委員会(CFTC)の投機ポジション(以下、オプション含む)に関して、マージドマネーは基本、転売と新規売りでネットロングを減少させており、トレーダーも同様の推移となっている。サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は23日、空売り筋に「気をつけるよう」警告したとのことだが、直近の投機は70~75ドルのレンジから一段安をうかがう傾向にあり、確かにエネルギー相の警告に挑戦する手口となっている。ただ、投機の手口も、深追いのあまり踏み上げにつながるパターンが多く、3月中旬、5月初旬の空売りも結局はゼロサムの手口となっている。
視点は変わるが、FRBの追加利上げ観測が高まり、円が対ドルで下落を続ける中、レバレッジファンドは円の売り越しを継続しており、トレーダーにとって足元のドル高・円安は東京市場への(買い)参入のインセンティブになる側面もある。
先物曲線に関して、逆ざやの構図に変わりはないが、足元の短期スプレッドは相場の上昇局面で順ざやに戻す場面も見受けられる。スプレッドは幾つかの要素から形成され、ケース・バイ・ケース、値位置にもよるが、相場の上値が重くなる場面では順ざやにシフトすることもある。また、1月終盤以降、長期先物曲線が示唆する上値は、平均82ドルから変わらない。つまり82~85ドルレンジでは売り圧力が働く傾向にある。(了)
※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表
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