◎〔アナリストの目〕NY原油、パーティー終了

コモディティ・アナリシス

2018/07/02 08:28

◎〔アナリストの目〕NY原油、パーティー終了後は再び65ドル台へ=吉中晋吾氏

6月22日の石油輸出国機構(OPEC)会合以降、ニューヨーク原油は、イラン産原油の輸入停止やカナダのオイルサンド施設の停止、そして石油掘削リグ稼動数の減少等を背景とした需給逼迫(ひっぱく)への警戒感から、わずか6営業日で9ドル近い上昇を演じ、2014年11月の水準まで価格を切り上げている。OPEC会合における協調減産緩和合意が市場予想のレンジ内に収まり、上述の要因等を背景に強気一辺倒で上昇しているWTI原油であるが、一方では、サウジが7月より生産量を日量1100万バレルに増やす計画が報じられるなど、あらゆるタイプの市場参加者が強弱要因のはざまでかじ取りに困難な日々が続いている。

米のイラン産原油輸入停止の要請は11月とされているが、トランプ大統領が、意地でも米中間選挙までには原油価格を落ち着かせようとする思惑に対して、サウジが7月より1100万バレルに増産することで「利確」の先手に打って出たと考えることもできるが、実際のWTI原油市場においても、ひとまず、足元から逆ざやが形成されてる。

今回の原油価格の上昇はWTI主導であり、それはブレント原油など対他油種との値差の推移や、WTI原油のカレンダー・スプレッドの傾きからも確認できることであるが、今回の急騰劇をもう少し深堀してみると、売方の踏み上げが背景の一因となっていることは留意しておかなければならないプロの運用者は通常、市場全体を見渡し、ほとんどの市場参加者が参入するスポット価格から一歩引いた場所を主戦場としているが、時として、豊富な流動性とアツい値動きが展開される近い場所(スポット)に収益機会を求めることもある。今回は、この急騰相場にうまみを感じ、一時的に“そのエリア”にショートで参入した運用者も多くいたが、「一時的な参入」と自分に言い聞かせながらも、予想をはるかに上回る逆ざやのスピードに飲み込まれ抜け出しに失敗したトレーダーも少なからずいた。結果として、WTI原油市場では“踏み上げ”による踏み上げが積み重なり、今回のような急騰劇を演じる一因になったと考えることもできる。

市場を“動かす”ことはヘッジファンドにも誰にもできないが、急激な流れを生む“きっかけ”になることは多々あり、その多くは、今回のような踏み上げからもたらされることがある。あくまで一つの要因にすぎないが、直近相場を読み解く上で、ファンダメンタルやテクニカル、そして外部分析だけでは解析できない側面が、このトレーダーらのポジション動向に隠されていることは留意しておきたい。

ちなみに、パーティーにも終わりは来る。沈むときはショート(短時間)で65ドル近辺に戻すことも考えられる。
出典:時事通信社
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