2018/05/23 06:32
◎〔アナリストの目〕NY金、下半期前半は1240~1320ドルを想定=吉中晋吾氏
リスク回避の動きに支えられた上半期のニューヨーク金は、5月も終盤に差し掛かる中、米利上げを意識した調整局面を迎えている。
底堅いレンジ相場を形成していた上半期であるが、4月以降、上昇基調にシフトした米長期金利やドルインデックスに上値を抑えられる状況が続く中、ユーロ安などのネガティブな外部要因も重なり、レンジを大きく切り下げている。
下半期の前半は、1240~1320ドルのレンジを意識した動きを想定しておきたい。
注目点は①ドルインデックスと米長期金利②建玉動向(COTリポート)と上場株式投資信託(ETF)残高の水準になる。以下、それぞれのポイントを検証する。
①については、4月中旬以降、米長期金利とドルインデックスがそれぞれの抵抗線を上抜けたタイミングでNY金の市場環境にも変化(上値の切り下げ)が生まれる中、5月15日発表の米4月小売売上高を好感したドル高と、2011年以来の高水準となった米長期金利の上昇がトリガーとなり、NY金はダウンサイドを削られ、1300ドル割れとなった。
ただ、1300ドル割れの伏線はもう少し手前で敷かれており、筆者も、4月25日の段階では会社のディーラー仲間に「レンジ解除したぞ(1305~1355ドルのレンジ相場が一段切り下がる)」と伝えた。理由は、シンプルに、上述のドルと米金利の力強い上昇基調(売り要因)と、リスク回避の動き(サポート要因)のバランスが崩れたからである。つまり、後者(地政学)に対して市場参加者の意識が緩み上昇力が鈍化する一方で、前者(ドルと米金利)のNY金売り圧力が膨らみ続けていたことになる。
ちなみに、このバランスの崩れから生じたNY金の下げ余地はたっぷり残されている。
②に関しては、昨年7月以来、投機筋ネットロングが10万割れとなっており、高止まりしているNY金ETF残高の水準とのバランスを考えると、確かに“買いやすさ”もあり、心理的なサポート要因にもなる。
ただし、ポイントとしては、“上昇”要因ではなく“サポート”要因と表現している点であり、仮にNY金が下方修正の段階に入っているのであれば、あくまで“押し目買い”のような位置付けになる。
①と②を比較した場合、前者(ドルと米長期金利)が強者であることは明白であり、特に下半期に関しては、その構図に支配された動きが予想される。
ユーロドルなどとの兼ね合いもあるが、下半期前半は少し幅を持たせ1240~1320ドルのレンジは見ておきたい。
出典:時事通信社
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