2020/07/28 10:04
◎〔アナリストの目〕WTI原油、40ドル中心のレンジ続く=吉中晋吾氏
6月初旬以降、ニューヨーク原油(WTI)は、内外の強弱材料が拮抗(きっこう)したレンジ相場を維持してい る。
WTI原油を取り巻く内外材料のバランスに大きな変化はない。ボトムは、国際エネルギー機関(IEA)による世 界石油需要見通しの引き上げや、新型ウイルスワクチン開発をめぐるポジティブな動向が底を支え、一方のトップサイドは、 米欧と中国の対立から世界経済や石油需要に悪影響を及ぼすとの懸念、また、高水準を維持した状態の米国内原油在庫が上値 を抑えている。
リバランスとセンチメント中心の手口となっていた直近相場から、他市場との温度差を意識した値動きの兆しも見ら れるが、当面は40ドルを中心にプラスマイナス5ドルのレンジを推移するものと考える。
◇投機筋、節目の41ドル付近で売買繰り返す
米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉から見る投機筋の動向に関しては、6月初旬以降、ネットベースで大きな 変化はなく、基本、ロングの水準を維持した状態の中、節目となる41ドル付近で新規ショートを絡めた売買を繰り返してい る。依然、マネージドマネーのセンチメント自体は「上」を向いているが、トップボトムが固められたWTI原油を取り巻く 環境を勘案すると、深追いすることなく、45ドル前後のレンジで、いったん手じまいに動くものと考える。
また、米エネルギー情報局(EIA)在庫統計に関しては、特に直近は在庫量の振れ幅が大きかったこともあり、価 格自体も相応の振れを演じる場面が続いたが、いかに激しい値動きになろうとも、基本は41ドルを中心に転売・買い戻しが 行われていたのは興味深いところ。
ちなみに、直近は、EIAよりも米石油協会(API)の在庫統計を好むトレーダーも少なくない。投資判断の要で ある出来と流動性の観点では米国時間ど真ん中のEIAに遠く及ばないものの、こと「トレーディング」においては、出来の 少なさと流動性の細さを逆手に取るプレーヤーが多いのも事実。予想はEIAに任せ、実質的な部分はAPIで「取る」と 言ったところか。
◇当・先の動向、意識しておきたい
内外材料がバランスされた適温相場を形成して以降、WTI原油の内部イールド、またインターコモディティー市場 では平穏な横ばい状態が続いている。イールドの全体像に関しても、遠い先の限月まできれいな曲線が描かれており、残念な がら、ヘッジファンドやディーラーが好みとする稼ぎの形にはなっていない。部分的、一時的な「誤謬(ごびゅう)」が生じ たとしても短時間で修正される傾向にある。
ただ、7月中旬以降、若干イールドの緩みも確認されており、これらが期近価格の下落か、それとも期先価格の上昇 か、または全体的な押し上げ・押し下げの中、形成されているかどうかといった点も注視しておきたい。原油のイールドは、 メタル系のイールドの動きとは質が異なり、状況により先行遅行はあるが、レンジや方向性を測る上で重要な判断基準の一つ になるため、当ぎりと先ぎりの動向は常に意識しておきたいところ。
上記の流れを踏まえ、当面は、内外の強弱要因が拮抗する中、40ドルを中心にプラスマイナス5ドルのレンジを推 移するものと考える。
出典:時事通信社
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