◎ゴールドの存在そのものを意識し始めたマーケット

コモディティ・アナリシス

2020年02月21日
◎ゴールドの存在そのものを意識し始めたマーケット
近くの公園に行くと既に桜が咲いていた。最初は梅かな?と思ったが、三・五分咲きではあるものの、広いエリアで開花していた。気候の変化を1年単位で感じる様になるとは。コモディティの世界も含め、さまざまな物事が転換期を迎えているな、と感じる今日この頃。
さて、年初の米・イラン間の緊張から現在の新型肺炎が市場に与えた影響に関する考察に関しては、切り口を変え論じたところで結論はおおかた似通っており、筆者の活動エリアである運用の現場でもほとんどトピックに上がらないため、ここでは割愛させていただきたい。現場サイドの人間として、大局、プレーヤーたちが残した足跡、現場の視点を考察する。
現在の市場環境、大衆の心理をのぞき込むと、ケイ線・テクニカル、その他ファンダメンタルなどの材料よりも、ゴールドの「存在」そのものを意識した手口が多くなった様に感じる。相対的であれ、消去法であれ、ストレートなリスク回避であれ、金が必要とされる環境にある事は確かだろう。

◇ドルと金のシンクロ
大局で金市場を考察する際、ドルと米金利を重ね合わせ金の現在地を測る方法は広く知られており、理論値といった類のものでは無いが、シンプルで精度が高いツールである。2019年においては、8月後半で金市場が過熱しているとのサインを示し、以降、金価格は緩やかなペースで値を消す格好となった。今年に関しては、1月末、つまりNY金が1600ドル手前に接した場面で再び過熱のサインが浮かび上がったのだが、下げ幅もそこそこに巻き戻しに転じた。
一つの背景としてドルと金のシンクロがある。従来は“逆”のイメージであるが、内外材料と相対的な力関係の結果、ドルと金で安全資産を共有する流れが形成されており、年初からの相関性は0.69近くになっている。時折、思い出したように逆相関になるが、気が付けば元のさやに戻る動きを繰り返しており、簡単には金価格が下がらない構図の背景のひとつとなっている。

◇カギはディテール
投機筋の動向は誰もが気になるところであり、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細のショートポジションに関しては、大小関わらずインパクトが強いため留意しておく必要がある。その投機筋ポジションであるが、一般的には、大口、またはCTA単体のネット水準(全体像)から展開を予想する傾向が強い。その見方自体に問題は無く、金を含む昨年のコモディティ市場は、トレンドと投機筋ネットロングがきれいにリンクしていた事もあり、大局では重要な視点と言える。
ただ、銘柄の違いで利用価値が大きく異なるケースもあれば、構造の変化で“過去”が通用しなくなる事もあるため、例えばトレーダー動向などを組み合わせて考察するなど、常にディテールを意識する事を心掛けたい。二つを組み合わせた上で直近のポイントを振り返ると、19年6月初旬の買い場から同年9月中旬ごろの出口まで一本の線、つまりトレンドを引く事ができる。ちなみに、「今」は何のサインも無い。良くも悪くも正常という事になる。

◇現場の目
出入り口はどうするか。特に相場は出口が難しい。何故なら、マーケットは、出口が決まらなければ入り口も決まらない側面があり、相当のギャンブラーであれば逃げ足がずばぬけて速く、出口を決めていなくても構わないが、大半の大衆は準備が必要である。一つポイントを挙げるとすれば、主要現物市場との乖離(かいり)、つまりプレミアム/ディスカウントを物差しにする事も可能。一つ例を挙げると、昨年8月中旬ごろは、主要現物市場に対して若干先物が行き過ぎた向きもあり、程なくしてマーケットの過熱感は沈静化し、価格は下落した。現時点において特別な違和感は無いが、今の金市場は展開が早いためタイムリーに主要現物市場の動向を確認しておく必要がある。

◇何を対象にしているのか
さて、今後の展開であるが、価格を聞かれても筆者にはわからない。理由は、筆者は相場で勝つ事、または負け戦をトントンに戻す事が仕事であり、価格予想する能力は無い。もう一つの理由は、人によって頭の中で考えている「金」が異なるためであり、例えば、ある人は先物、ある人はETF、ある人は金のイールドを、ある人は現物を売買の対象にしており、例え筆者が「NY金1700ドル」と言ったところで、何を選択するかによって取るべき手段、戦略は全く変わってくる。先物であれば、当然、道中の証拠金・リスク管理も重要になり、価格だけを示す事はできない。
つまり、相場とはリスク管理であり、リスク管理の後に予想が付いてくる。
ただ、上述の三つのポイントには、全てのタイプの金を取引する上で最低限の情報はそろっており、少なくとも出入り口は見いだす事ができると考える。(了)
出典:時事通信社
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