2018/09/10 08:03
◎〔アナリストの目〕NY金、1160~1180ドル台のポジションが鍵=吉
中晋吾氏
8月中旬以降、ニューヨーク金は、トルコ・リラ等の資源・新興国通貨の一時的な下げ止まりをきっかけに1160ドル台の底値から上昇に転じた。同24日のジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長の会見が気持ちハト的に受け止められ、金市場参加者のセンチメントも若干好転したように見受けられるが、一方で、一度は下げ止まった資源・新興国銘柄もアルゼンチン・ペソの急落で再び上値を抑えられる中、激化する貿易戦争が一段高を阻止する構図となっている。底堅さは維持するものの、上記の構図を背景に1~2カ月は1160~1220ドルのレンジで新規買いと利益確定売りのパターンが続くことが予想される。
以下、注目すべきポイントを確認しておきたい。
現状、足元の相場は、中国、インドそして新興国の実需買いが下支え、そして投機筋の金ショートの買い戻しが価格上昇の動機になっている。投機筋のショートポジションに関しては、8月14日時点のCFTC建玉で16年ぶりの売り越しとなっており、米国債先物の手口とシンクロしていることでも注目を集めているが、現時点においては、1160~1180ドル台の水準では深追いせず利益確定のタイミングを計っているようにもうかがえる。
ユーロ・ドル(ドルインデックス)とNY金の表面的な価格の相関性も注目されるが、同時に、1160~1180ドル台での、通貨、メタル、米国債先物の内部のポジション動向(CFTC建玉)とも整合性がと取れているかを注視しておきたい。その整合性が崩れるときが投機筋の動きだしのタイミングの鍵になり、ひいては一般投資家の売買ポイントになると考えられる。
市場環境が若干複合的であるため、売買の判断にちゅうちょすることもあるかもしれないが、基本的には単純に“拾う”スタンスで良いのではないだろうか。プロの現場では、インターコモディティーや内部スプレッドでその場しのぎの売買も可能であるが、一般的な市場参加者の目線で考えると、腰を据えた中期目線の売買、つまり金が本領を発揮する3~6カ月の中期投資のスタンスで対処するのが望ましいと考える。
プラチナに関しては、8月中旬ごろ、一度は金vsプラチナ・スプレッドが下げの兆候を見せたものの横ばい継続。価格も811.4ドル(2016年1月安値)を割って以降、752.1ドル(08年10月安値)手前の首の皮一枚で生き残ってるさえない状況下にあるが、ゴールド同様、価格そのものよりも、内部のポジション動向(特に資源・新興国通貨)等とのバランスを見極めたポジション取りが鍵になるのではないだろうか。
出典:時事通信社
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