◎〔アナリストの目〕WTI、50~60ドルのレンジ=吉中晋吾氏
米株高と投機筋によるポジションの買い戻しを背景に、堅調に推移してきたニューヨーク原油(WTI)相場は2月以降、節目となる55ドルの大台を回復することとなった。底堅さの一面は感じられるものの、主なサポート材料は米株高や石油輸出国機構(OPEC)の協調減産関連のニュース、そして製品・ブレント原油に対する割安感などの外部要因に依存している。WTI独自の材料は乏しく、価格上昇の動機となった投機筋によるポジションの買い戻しも一巡し、若干停滞気味の中、一方で55ドル台で買い残されていた因果玉の整理も進んだことから、上値の重さが解消傾向にあり、現状はニュートラルの状態であると言える。足元は50~60ドルのレンジで外的要因を眺めた相場が続くものと予想する。
潮目の変化を知る上で、以下二つの内部動向を確認しておきたい。
まず、米商品先物取引委員会(CFTC)建玉の投機筋ネットポジションであるが、直近データ(1月22日)によると、1月初旬に50ドル台手前で仕込まれた投機筋ショートの買い戻しが確認できる。時期を同じくしてWTI価格は上昇に転じており、この買い戻しが、その後の50~55ドル定着の足場固めとなったと考えられる。1月中はWTIと他油種や製品間にも大きな動きがみられ、それら裁定の兼ね合いも考慮すると、額面通りに受け取れない部分も当然あるが、全体的な流れとしては、ポジションの買い戻しが50ドル超えのサポートになったと素直に考えて問題ないだろう。ちなみに、上述の通りWTIは当面ニュートラルなスタンスゆえ、他油種や製品との裁定が活発になることが考えられ、今後のCFTC建玉では商品間のポジション増減やスプレッドポジション動向を潮目の見極めとして注視しておく必要がある。
次は、内部曲線の動向になる。WTIの2月以降の停滞感、また他油種や製品に対するスプレッドのマイナス方向への拡大は、WTIの足元のコンタンゴの拡大が一因となっている。ただ、2月中旬以降は割安感も手伝い、下げ幅とマイナス乖離(かいり)の拡大に歯止めがかかっている。スプレッド(コンタンゴ)そのものの拡大要因としては、在庫レベルや他油種との裁定ポジション解消の崩れが一つの背景として考えられるが、5~6月以降はコンタンゴの曲線も緩やかになっている。WTI価格の潮目の見極めとして、また、他油種とのスプレッドの伸縮のサインとして、コンタンゴとバックが切り替わる限月間がカギになることは留意しておきたい。
足元のレンジに関しては冒頭の通りで、WTI単体では下値が45ドルと考えている。
出典:時事通信社
本記事・画像・写真を無断で転載することを固く禁じます
コメント