◎〔アナリストの目〕WTI、45~48ドルの攻防がカギ=吉中晋吾氏
ニューヨーク原油(WTI)は、上値の重さが若干軽減されたようだ。現時点でWTIに50ドルを目指す動機はなく、レンジにも変化はない。ただ、市場参加者のセンチメントは若干落ち着きを取り戻しつつあり、射程圏である45ドルで足元を固めることができれば、48ドル近辺の攻防が今後の分岐点になるだろう。
5月25日の石油輸出国機構(OPEC)会合以降、下落の一途となったWTIだが、昨年11月以来の安値と同水準となる42.05ドル(中心限月)を6月21日に付けた後は反転し、緩やかなペースで上昇している。
以下、三つのポイント(①内部要因=米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉のネットポジション②ファンダメンタルズ=米エネルギー情報局(EIA)原油在庫の水準③テクニカル=下値支持線、上値抵抗線)で検証してみる。
CFTC建玉に関しては、5月のOPECと非加盟国の会合を控え、減産延長期間のオプション(予想9カ月にオプション3カ月)に期待をした投機筋が48ドルから買い上げた。しかし、想定通り「9カ月延長」の結果を受けた後は50ドルを割り込み、下げ足を速めた。再度50ドルの突破に失敗した後は、先の投機筋、ヘッジファンドの買い上げのポイントとなった48ドルを境に買い玉の投げが雪だるま式に加速。ただ、直近では市場も落ち着きを取り戻しており、最新の建玉報告では、ある程度の投機筋のネットロング増が期待される。
ファンダメンタルズでは、4月半ば以降、重しとなっていた在庫水準が軽減したため、市場参加者は慎重な入り方ではあるが、足元の改善に伴い42ドル台は新規の買いに動いているようだ。一方、45ドルで足元を固め、景気よく50ドル台を目指す材料があるわけでもないことは確認しておきたい。
テクニカル面については、6月21日に安値を付け、昨年11月14日の安値とダブルボトムを形成したことでケイ線要因に基づく買いが見られた。今後は節目となるラウンドナンバーである45~50ドルを意識した動きも考えられるが、その中間には出来高が集中し、投げ売りのポイントとなった48ドル台が分岐として控えている。
上昇シナリオを考えるのであれば、ひとまずは48ドル台の攻防に注目したい。
出典:時事通信社
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