2020/09/02 06:42
◎〔アナリストの目〕WTI、42ドル中心のレンジ続く=吉中晋吾氏
8月初旬以降、ニューヨーク原油(WTI)は、内外の強弱材料が拮抗(きっこう)したレンジ相場を維持している。
ハリケーン「ローラ」が勢力を強め、製油所が集中するテキサス州とルイジアナ州の州境近くのメキシコ湾岸に壊滅的な被害をもたらすとの懸念から、今年3月以来の高値43.78ドルを付けたが、懸念されていたよりも被害が大規模にはならず、マーケットは緩やかに値を消すこととなった。
原油の需要回復期待、そして、超緩和的な金融政策で波に乗るダウ平均株価などのニューヨーク主要3指数が、WTI原油の底を支える構図に変化はないが、一段高につながる動機が見当たらない状況にも変化はない。
当面は42ドルを中心にプラスマイナス3ドルのレンジを推移するものと考える。
◇投機筋も静観状態
米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉から見る投機筋の動向に関しては、8月4日以降、3週連続で投機ネットロングが減少(約3万6000枚減)しており、内訳は若干転売が優勢となっている。適温相場入りした6月中旬以降、取引参加者(トレーダー数)や取組高に大きな変化はなく、現状、42ドルを中間レンジとして、同じ顔触れで玉が回されているものと推測する。
また、米エネルギー情報局(EIA)在庫統計に関しては、現状、原油在庫が5週連続で減少しており、これらが、WTI原油の地味な底上げに一定の影響を与えていると考える。ただ、レンジ自体がタイトゆえ、在庫増減に対する市場参加者のリアクションも限定的である。
◇スプレッド市場の動きも限定的
前回執筆分(7月28日)でも述べたように、内外材料がバランスされた適温相場を形成して以降、WTI原油の内部イールド、またインターコモディティー市場では平穏な横ばい状態から変化がない。6月末以降拡大傾向にあったコンタンゴも、8月以降は平穏な横ばい状態が続いている。
原油市場が狭いレンジで推移する間は、限月間スプレッド市場においても当面“タイト”な値動きが続くものと予想する。
足元の原油版恐怖指数OVX指数(Cboe Crude Oil ETF Volatility Index)も安定した推移となっている。
上の流れを踏まえ、当面は、内外の強弱要因が拮抗する中、42ドルを中心にプラスマイナス3ドルのレンジで推移するものと考える。
出典:時事通信社
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