2020/12/07 11:53
◎〔アナリストの目〕WTI、40~48ドルのレンジ=吉中晋吾氏
11月初旬以降、ニューヨーク原油(WTI)相場は、新型コロナウィルスのワクチン開発に対する期待感などを背景に堅調に推移している。
足元、WTIを取り巻く内外材料のバランスは上向きにバイアスが掛かった状態にある。新型コロナウィルス景気対策法案やワクチン開発への期待と過去最高値を更新した米国株がマーケット全体を押し上げ、原油先物も期近主導の上昇曲線を形成している。ただ、一方では、国際エネルギー機関(IEA)が来年前半の需要回復に慎重な見方を示しており、原油市場においても、分岐点でもある46ドルでは慎重な売買が続いている。
足元、44ドルを中央値としてプラスマイナス4ドルのレンジを推移すると予想する。
◇センチメント主導の相場
英国では、米製薬大手ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスのワクチン接種が12月8日から始まるなど、市場の楽観ムードをより過熱させる材料が続いているが、IEAが「ワクチンによる生活の再開がいつどのように可能になるか分かるには時期尚早」と示したように、足元のマーケットは、“買わざるリスク”の衝動に駆られている側面が強いと考える。
センチメント主導で動いた相場は、“来た道”以上の巻き返しを演じる可能性もある点は留意しておきたい。
◇下振れの余地は限定的
相場の過熱感は、先物市場における限月間のさやの状況でも確認できる。米大統領選を境に株式市場に資金が流入する中、原油先物も、コンタンゴ(順ざや)の引き締まり、フラット化、そしてバックへと段階的な変化を見せてきた。上述のように、確かに期近主導の過熱感は感じられるが、全体的な価格の底上げが行われていることも事実であり、原油市場単体で考えた場合、下振れの余地は限定的と考える。
いずれにせよ、運用者の立場としては、過熱したエリアから離れ、中間エリア(期中物)における局所的にゆがんだ部分、または、よりファーサイド(期先限月)のフラット化したエリアで調整(売買)している向きが多いように伺える。
前のめりになっている部分(期近エリア)は段階的に修正されると考える。つまり、足元、期近主導の相場になることが予想され、当面は、44ドルを中央値としてプラスマイナス4ドルのレンジを推移する可能性が高いと考える。(了)
出典:時事通信社
本記事・画像・写真を無断で転載することを固く禁じます
コメント