2019/01/07 08:29
◎〔アナリストの目〕WTI原油、40~55ドルレンジの調整=吉中晋吾氏
2018年10月以降、主要産油国の原油生産量の増加、供給過剰懸念、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国間の信用不安、そして世界的な景気後退懸念によるセンチメントの悪化を背景に下落の一途となっていたWTI原油であるが、2018年12月24日から26日以降は、売り方の買い戻しと断続的な打診買いに支えられ上昇の兆しを見せている。米シェール企業の採算ラインと考えられている40ドル前後の水準と、テクニカル的に意識される42ドル台の支持線に挟まれたレンジでは買いが入りやすく一時的な底入れ感もあるが、現状、基調を変化させるほどの材料は見当たらない。向こう1カ月程度は40~55ドルのレンジ相場での調整が続くことが予想される。
潮目の変化を知る上で、以下二つの内部動向を確認しておきたい。
まず、CFTC建玉の投機筋ネットポジションであるが、2018年4月17日に投機筋ネットロングがピークアウトして以降、直近データでは30万枚割れ目前となっている。前回、同水準を付けたのは2017年7月ごろにさかのぼるが、価格帯も42~45ドル台で符合していることから心理的にも買い戻しを促す水準であり、今回の下げ止まりの一因と考えることもできる。
次は、内部曲線の動向になる。2018年10月17日ごろから直近限月のスプレッドがコンタンゴにシフトしたことを皮切りに、1カ月半にわたる長い急落劇となったわけであるが、2018年12月20日の時点でスプレッドに下げ止まりの兆しが生まれ、その後、24~26日のマーケットでWTI原油は反転上昇することとなった。現時点においては、内部の過熱感も収束しニュートラルな状態になっている。また、価格下落と底入れのタイミングはスプレッドが原油価格に先行することもあるが、逆のケースでは原油価格が先導する傾向があることは留意しておきたい。
上述の材料や曲線の動向を踏まえ基調の変化を期待したいところであるが、基本的には売りの買い戻しを主要因とした下げ止まり、そして株式の回復を背景とした外的要因による反発が価格上昇の動機となっており、現状、現場の空気を変える状況には至っていない。足もとは40~55ドルのレンジで調整しつつ、上記材料をもとに次なる潮目の変化を伺いたい。
出典:時事通信社
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