2020年 11月25日11:42 am
いつも通りのゴールド。攻めもなければ守りもない、素のゴールドの状態。投資の観点から見ると、黙って保有するフェーズにあるだけ。
ただ、運用やトレードを生業としているプレーヤーにとっては、事情は異なる。
中長期投資の視点では、8月以降の限定的な値動きと出来高の流れは単なる「調整局面」であるが、半年、1年で結果を残さなければならないトレーダーや運用者にとっては「音のない4カ月」は、果てしなく長い時間に感じるものである。
今は生き残りを懸けて静観しているトレーダーも少なくない。
◇原油もポジション取りに苦慮
状況は同じコモディティーの原油市場も同様である。
出来高も値幅も“なかった”6〜8月の最悪期に比べればマ
シな方であるが、現状、原油価格だけではなく、スプレッド市場も中央値付近に居座っており、典型的な日計りトレーダーのみならず、中期スパンのトレーダーも、ポジション取りに苦慮する期間が続いている。
「スプレッド」と言っても、単なる同一市場内の限月間の値幅だけでなく、他市場間(インター・コモディティー・マーケット、クラック・スプレッド等)においても取引機会は限られている。結果として、トレーダーは収益機会を求め“より”中央へ集まり、流動性を得ることと引き換えに普段の何倍ものリスク(ロット)を差し出す。
ただ、このような状況が続くと、中央値付近の密度が一気に高まり、最終的には膨れ上がったものが破裂し、普段見られないような振れ幅を演じることにる。
“それ”が3、4、5月の結果の一つであり、過去に痛い思いをしたからこそ、今は腫れ物に触るような対応しかできない。
つまり、今は生き残るために、あえて静観を維持している。
◇建玉動向、全体像から把握
直近の米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉動向を確認しておきたい。
全体像としては、ニューヨーク主要株式の巻き返しを受け、シルバーのポジションが“より”しっかりで推移している印象で、年初から商品間(ゴールド・シルバー、ゴールド・プラチナ)の価格推移と、マネージドマネーのネットポジションがきれいにシンクロしていることが確認できる。
また、8月中旬頃に個人投資家が上場投資信託(ETF)市場に押し寄せたときのように、一時的な価格の急騰から生じた投機ポジションとの連動性の乖離(かいり)には、単にさやの伸縮や、修正を狙う話だけではなく、転換期を占う多くの要素が隠されている点は留意しておきたい。
◇市場ごとの特性つかめば強力な武器に
ドル(インデックス)とゴールド間に関しては、小口動向を考察するのも一つかもしれない。6月中旬頃はドルインデックスの小口ポジションが、ショートに転じたタイミングであったが、時を同じくして、ゴールドのロングポジションが緩やかなペースで増加し、両市場の価格も同様の推移(ドル安ゴールド高)となった。
伏線として、ユーロの小口がロングを積み増していたことも、上の流れ(ドル安ゴールド高)を形成する上で重要な要素になったと考えられる。
これらは、あくまで一つの材料にすぎず、建玉の「性質」は商品ごとに異なり、他の市場で“機能”したカテゴリーが全く通用しないこともあるが、市場ごとの特性をしっかりとつかむことができれば強力な武器にもなる。
◇金、常にポートフォリオの一部にある存在
理論とファンダメンタルズで運用をしているのか、それともテクニックと感性で相場をしているのか、または、それら中間に位置しているのか。
“その”あたりの線引きは重要であるが、それより前に、自身の土俵で物事を考えているかがより重要と考える。
「おいしい高配当銘柄がある」と言われても、自身の投資スタイルやポートフォリオに合致しないのであれば“見送る”くらいの心構えが必要かもしれない。
投資に正解はなく、40年スパンと10年スパンの投資計画のポートフォリオも異なるが、少なくとも、ゴールドに関しては、いつの時代においても常にポートフォリオの一部にある存在と考える。(了)
出典:時事通信社
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※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト 代表取締役
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