2021年 5月24日5:37 pm
◎〔アナリストの目〕WTI、57~67ドルのレンジで調整=吉中晋吾氏
ニューヨーク原油(WTI)は、5月初旬から続いた65ドル中盤の攻防を経て、足元、手じまい売りを中心とした調整局面にある。
WTIの下振れの背景としては、イラン核合意に向けた米イラン間接協議の進展の報と原油供給拡大の見通し、また、上昇トレンドを形成していたビットコインをはじめとした暗号資産や穀物、金属、エネルギーなどのコモディティー、その他リスク資産の反落など、複数のネガティブな要因が重なったことが挙げられる。ただ、ダウンサイドも深追いするレベルになく、投機サイドのポジションも手じまい中心となっており、当面、バイアスをかけるポジショニングは控え、レンジ中心の調整が続くことが予想される。
トップサイドは67ドル、ダウンサイドは57ドルのレンジを予想する。
◇環境に大きな変化なし
筆者の前回分のアナリストの目(4月5日)では、当面のレンジを「トップサイドは67ドル、ダウンサイドは57ドル」としたが、現状、WTIを取り巻く環境に大きな変化はなく、しばらくは同水準を維持すると予想する。高騰するリスクオン資産と過熱する利益追求の裏側で、WTIもタイムリーに足並みをそろえる場面は見られるものの、先物市場における長期曲線が“引き締まる”場面では、期近主導で失速する展開を繰り返している。
また、66ドル台は、期近限月における当面のテクニカル的な抵抗線として意識されてきた水準であり、3月初旬同様、同水準からロングを減少させている投機筋のポジショニングからも、66ドル台が抵抗線であるとのコンセンサスがとれている。
とはいえ、その抵抗線に関しても、基本は手じまい中心の商いとなっており、動機付けられたショートや新規建玉は見られない。上述で「ダウンサイドも深追いするレベルになく」と示唆したように、COT建玉から見るトレーダー動向も動機薄のセンチメントとなっている。
◇先物曲線の伸縮、注視
先物曲線(期近と期先の価格差)に関しては、これまでも「上昇サイクルの持続の可能性を否定しているわけではないが、少なくとも、張り詰めた状態にある先物曲線において一定の内部修正は必要であり、全体像のバランスを勘案し、期近限月主導で売り調整される可能性が高いと考える」と述べ、調整局面入りのタイミング、そして先物曲線の伸縮に留意する必要性に言及した。
例えば、直近で高騰相場を演じた銅も似たような側面を共有しており、デリバティブ市場全体から見た期近限月を評価する上で、曲線を確認することは重要であり、バランスが崩れたものはいずれ修正する傾向にある。ただ、銘柄ごとで参加者タイプが異なれば価格のリアクションも異なる。素直にオーバーシュートする市場もあれば、銅のようにスクイーズが終了した後、緩やかな下げに転じる傾向の市場もある。コモディティーの難しい部分ではあるが、WTI市場に関しては、スポットから6本目以外は、基本、素直な先物曲線を描く傾向にある。(了)
出典:時事通信社
本記事・画像・写真を無断で転載することを固く禁じます
コメント