◎〔アナリストの目〕WTI原油、世界的な需要低迷を警戒

コモディティ・アナリシス

◎〔アナリストの目〕WTI原油、53~63ドルのレンジ相場続く=吉中晋吾氏

石油輸出国機構(OPEC)による協調減産、イランをめぐる中東の緊張感の高まり等を背景に底堅く推移しているニューヨーク原油(WTI)相場であるが、一方では、世界的な需要低迷を警戒した市場のセンチメントが上値を重くしている。6月中旬以降のWTI原油はほぼ55~60ドルのレンジで推移しており、地政学的リスクだけを材料に上値を追うには厳しく、半面で、突っ込み売りを仕掛ける理由も乏しい状況に変化は無い。直近レンジは53~63ドルを予想しており、53ドル割れから50ドルの間では新規買いが活性化することが考えられる。

内部動向を整理すると、まず米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉動向に関しては、前回6月18日のアナリストの目で「プレーヤー比率に関しては、2月末以来、ネットで売りが買いを上回ったことからセンチメントが弱気に傾いたとみる向きもあるが、このパターンは、しかしながら、市場の下げ止まり、または反発を示唆している」と筆者が指摘したように、その後、WTI原油は51ドル台の安値から上昇に転じ、同じく予想レンジの上限である60ドル前後を境に失速した。投機筋ポジションに関しては、例えば、5ドルのレンジを動かすのに要したエネルギーが新規か手じまいかによって価格変動の質も異なるため、転換期を読み解く上で、その内訳を知ることが重要になるが、直近では、投機筋が60ドル手前の高値付近で新規ロングを仕込んだ足跡が確認されており、若干下方シフトしている相場を考慮すると、投機筋ロングの吐き出しが価格下落に拍車を掛けることも予想される。

次にスプレッド/曲線の動向であるが、7月中旬以降は基調の変化が確認されている。WTI原油は7月中旬にピークアウトしたが、伏線として期近と期先の曲線は既に下降シフトを形成していたことから、ある意味、WTI原油の反落は織り込み済みであったと考えられ、また、足元のセンチメントに変化が無い限りは53ドル近辺までの続落も予想される。ちなみに、12カ月以降の曲線の動向に関しては、基本的にはWTI原油に呼応する推移となっている。レンジは53~63ドルを予想している。直近相場が55~60ドルのレンジで推移しているのも、中間レンジ内における一つの調整期間と考えることもできる。上値は60~63ドル、下値は50~53ドルで参加者のポジションに変化が生まれる分岐点と予想する。
出典:時事通信社
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