◎〔アナリストの目〕WTI、内部、外部の要因は拮抗

コモディティ・アナリシス

2022/12/26 10:27

◎〔アナリストの目〕WTI、当面70~90ドルレンジ=吉中晋吾氏

ニューヨーク原油(WTI)先物相場は、12月9日以降、国内在庫の減少、ロシア産原油の輸出減少見通し、また寒波による在庫逼迫(ひっぱく)観測を受けじり高の推移となっている。

11月末、長らく続いた期近限月の逆ざやが解消された。以降、市場では70~80ドルのボックスを形成しているが、足元、米国が寒波に見舞われ、原油、ジェット燃料在庫が逼迫するとの思惑から堅調な推移となっている。また、中国におけるコロナ感染をめぐる不透明感よりも、経済活動再開による石油需要の回復への楽観的な見方が先行している向きもある。

市場を押し下げる要因は特段見当たらないが、依然80ドルを中心とした70~90ドルのレンジは維持されており、年末年始は同水準内でニュートラルな動きが予想される。

◇内部、外部の要因は拮抗

内部要因、外部要因は拮抗(きっこう)している。

12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、ドットチャート(金利予測分布図)でメンバーの7人が2023年は5.25%以上を予想するなど総じてタカ派的な印象となり、WTIも相対的なリスクオフの流れを嫌い反落した。ただ、実際の金利先物市場においては、参加者がFOMCよりもハト的なスタンスであったことから早々に巻き戻すことに。

一方、米エネルギー情報局(EIA)が21日発表した週間在庫統計では、米原油在庫は589万バレル減と予想以上に減少。また、ジェット燃料を含む留出油在庫なども増加予想に反して減少したことから、改めて底堅さを確認する展開に。

米商品先物取引委員会(CFTC)における投機ポジション(以下オプション含む)はニュートラル。8月中旬に15万枚台まで縮小したマネージドマネーのポジション(ネットロング)は、一時20万枚台に回復するも、直近では15万~20万のレンジで平行線が続いている。参加者のセンチメントを測るトレーダー数に関しても、10~11月では80~90ドルのレンジで買方増のトレンドにあったが、後述する長期先物曲線の圧迫感から90ドルの上値を抜け切れずトーンダウン。総取組高も約180万枚まで減少しており、年初比では約100万枚減となっている。

◇期近限月の逆ざや、11月末に解消

11月初旬から長期先物曲線がピークアウトし、以降、WTIは90ドル台から70ドル台へ。11月末には長らく続いた期近限月の逆ざやが解消され、現状はプラスマイナスゼロの水準、つまりニュートラルの状態にあり、価格帯も70~80ドルで調整されている。

ラウンドナンバー付近では一時的な動機も見受けられるが、レンジを動かすほどの材料は見当たらない。

当面80ドルを中心とした70~90ドルのレンジが予想される。(了)

※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表

出典:時事通信社
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