◎〔アナリストの目〕WTI、急伸の背景にファンドの買い戻しも

コモディティ・アナリシス

◎〔アナリストの目〕WTI、70~80ドルレンジで推移=吉中晋吾氏

 ニューヨーク原油(WTI)は、5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控える中、ポジション調整主導の相場となっている。OPEC(石油輸出国機構)プラスの減産を手掛かりに底堅い値動きを演じてきたWTIは、利上げ観測を背景としたドル高基調を嫌い下落。以降、軟調な大豆油や石油製品、またガソリン在庫増を受け一段安となった。

 足元、参加者は供給減と需要低迷の不安の間でかじ取りが困難な局面にあり、リスク回避のセンチメントが支配的である。

 FOMCを控えたブラックアウト期間に入り、また月末要因を背景にしばしレンジ相場が続くものと考える。

 ◇急伸の背景にファンドの買い戻しも

 OPECプラスが発表した減産維持は一時的な価格急伸を招いたものの、供給減による世界経済へ与えるネガティブな側面が懸念され再び76ドル台へ“戻した”。

 アクティブな価格急騰の背景には投機の買い戻しが影響したことも考えられる。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の投機ポジション(以下オプション含む)に関して、前回のアナリストの目(3月28日)では「シリコンバレー銀行(SVB)余波でリスク資産が不安定になる中、原油市場では、投機が現状を好機ととらえ新規ショートに動いた」「投機が深追いを避け、ショートを清算するのであれば、早い段階での75ドル台への回復も難しくはないと考える」とした。

 マネージドマネーのポジションを追うと、3月21日~4月11日の間において相当量の買い戻しが確認できるが、一連の巻き戻しが終了した後、価格は75ドルに落ち着いた。

 つまり、OPECプラスの減産発表で市場が動機を得たことは事実であるが、価格急伸の背景は投機ポジションに起因しており、根本的には、市場のセンチメントは大きく変化していないと考える。

 ◇イベント次第では65~85ドルも

 また、足元の先物曲線も安定している。上記の通り、“イベント”が一過性のものであり、センチメントに変化なく、今年1月から続くレンジ相場へ回帰したと見受けられる。

 イベント次第で65~85ドルの振れ幅も考えられるが、ブラックアウト期間は70~80ドルのレンジで推移するものと予測する。(了)  ※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト代表  

出典:時事通信社
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