新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で原油需要が急減する中、石油輸出国機構(OPEC)とロシアの協調減産体制の終了を 受け、3月9日、ニューヨーク原油(WTI)はクラッシュした。
市場では投資家がマージンコールに追われ、OPECプラスの協議決裂後、エネルギー資源の輸出に依存する湾岸諸国が財政危機 に直面する中、WTI原油(5月きり)は2002年2月以来の水準(20.52ドル)まで売り込まれることとなった。
一度底が抜けた市場は回復に時間を要する。
新型コロナウィルスの封じ込め、また今後の経済的な影響にもよるが、数カ月から半年は低迷期が続くと予想する。
◇買い材料も無力化
30ドル台で下げ止まったWTI原油が、20ドル台まで続落した背景の一つとして、米エネルギー情報局(EIA)の在庫と WTI原油価格の水 準比でロングした買方の投げ売りが影響していると考える。確かに、直近1年間の流れを勘案すると、市場参加者の目に「30ドル台」が 割安に映ったことは理 解できなくもないが、方程式が崩壊した状況下において、内部要因一つで売買の判断を下せるほど甘い相場では無い事も事実。ただ、あく まで長期的な目線にお いてであるが、仮にWTI原油が10ドル台に割り込む場面があれば、中長期におけるバイホールドの機会になると予想する。
◇仕切り直し
米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉動向に関しては、基本、買い戻し中心。2月25日~3月10日の間に売り仕掛けた投 機筋も、30ドル のレンジで買い戻し、いったん市場から撤退する流れとなっている。静観のスタンスの背景としては、他市場の動向も踏まえ、改めて戦略 を練り直したい向きも あると思われるが、上述した「崩壊した方程式」同様、建玉明細から浮かび上がるシグナルもメーターを振り切った状態にあり、否が応で も静観せざるを得な い、と言うのが正直なところではないだろうか。
◇足元は緩い状態
現場の目線では、足元から6カ月先のイールドは軟調地合いが続くものと思われる。新型コロナウィルス感染拡大をめぐる今後の 行方にもよるが、センチメントは「上がるか下がるか」を考える心理状態には無く、しばらくは静観を維持したいようにもうかがえる。
当面は20~30ドルのレンジを中心とした売買が予想されるが、同時に、中長期を見据えた買い場を探すターニングポイントに なると考える。
出典:時事通信社
本記事・画像・写真を無断で転載することを固く禁じます
コメント