2020年 10月23日6:54 pm
◎レンジ相場続くNY金、サイクル忘れたとき動く
ニューヨーク・ゴールド市場は、ユーロ等の外生的要因やセンチメント主導によるレンジ相場が続いている。レンジは米実質金利が固め、トップサイドは主要現物市場に対するスプレッドが行き過ぎを抑制し、ダウンサイドはタイムリーな外部要因が巻き戻しを促す流れが形成されている。足元、市場参加者にできることがあるとすれば、ユーロドルを軸とした外生的要因との間に生じた振れ幅を“抜く”か、キャッシュポジションを若干厚めに備えておくことの二つが考えられる。
ただ、現状、米大統領選に対するコンセンサスが出来ておらず、直近では、連動性や物事のサイクルに乱れが生じている傾向にある。市場参加者は、足元の“レンジを抜く”ことにフォーカスしているが、参加者がサイクルを忘れたとき、物事が大きく崩れる可能性があることは留意しておきたい。
◇サイクルとポジション動向の関係も重要
ゴールド目線の判断材料とゴールドの価格水準だけではアクションを起こせない。上記で言及したように、物事にはサイクルがあり、動きだしのタイミングもサイクル内の順番が回って来たときが理想である。
筆者が8月12日号のゴールドレポートで「足元の通貨間の資金の循環は、ゴールド、そして欧州復興基金の合意などで動機付いたユーロ、また、現在、これらと同質のセンチメントを共有するビットコインを中心にローテーションされている」と言及したように、サイクルを理解することが相場を読み解くカギになる。また、当然、価格だけではなく、裏付けとなる投機ポジション動向も重ね合わせてみることも必要だろう。
改めて、直近の米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉を確認してみると、機動的に動くことのできる“小口”のポジション動向は、ゴールド、ユーロ、そしてドルインデックスの3市場間で方向性を共有している。(ドルインデックスは逆相関)。常時、上記のサイクルを意識することが投資において重要なポイントになる。
◇キャッシュポジションは不合理を“抜く”ためにある
とはいえ、楽観的な見方が増えると、不合理な売買も目立つようになる。上記のサイクルのバイアスが出来上がると、市場参加者の心理も強気になり、サイクルの波も巨大化し、“そこ”に感情的な側面が加わることで、不合理=つまり投資機会=が生まれる。
ここで重要になるのがキャッシュポジションの存在であると考える。
一つの例として、今年3月のクラッシュ時の状況を振り返ると、損失が巨大化する中、参加者の投資意欲は減退し、内外の取引条件も厳格化され、ところどころで好機が取り残される状況が生まれた。最終的に、“その”好機を手にすることができたのは、サイクルの乱れをいち早く察し、キャッシュポジションを備えていた参加者になる。
また、「サイクルとポジション動向の関係も重要」で言及したように、投機ポジション動向(実弾)を裏付けとすることで、テクニカル的戻し(均衡化)の側面も味方にできると考える。漁夫の利のイメージに近い。
いずれにしても、3月の例を理解することが、将来のゴールド投資にも生かされるのではないだろうか。
◇「ストップ(リスク・コントロール)」の勧め
短中長期スパン、投資・トレードにかかわらず、重要なのは「ストップ(リスク・コントロール)」。ストップと聞くと「トレード」をイメージする人も多いが、ここで言及しているストップの概念は、イコールでリスクコントロールの話であり、資産運用において切り離せない側面である。
筆者自身、資産運用においても最も重要と考えるのは「ストップ」であり、1000回聞かれたとしても、20年後に聞かれたとしても同じように回答する。なぜか―。予測が不可能であるように、リスクを完全に回避することは誰にもできない。出来ることがあるとすれば「コントロール」。
もちろん、コントロールしても“ぶれる”こともあり、常に完璧は求められない。ただ、野球のピッチャーと同様に、意識を集中させ、訓練を続けることで、そのコントロールは段階的に精度を増すことも事実だ。唯一自身がコントロールできるのが「ストップ」。
ストップができれば、資産運用はより安定すると考える。(了)
出典:時事通信社
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※吉中 晋吾(よしなか・しんご)氏 バーグインベスト 代表取締役
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