2022/02/15 10:09
ニューヨーク原油(WTI)は、地政学的緊張や複合的な需要の改善を受け2014年後半以来の高値を付けた。
欧州や中東の地政学的緊張、新型コロナ感染防止措置の緩和に伴う経済活動の回復、新たなエネルギー供給への投資の落ち込みなどを背景に、WTIを含め石油市場全体のボトムが切り上げられた。(石油と天然ガスを合わせた)リグ稼働数は635基で、20年4月以来の高水準となり、足元、14年7月30日以来の100ドルをうかがう状況にある。
ファンダメンタル同様、市場のセンチメントもブルに傾いた状況下にあり、適度な均衡状態を保ちつつ大台をうかがうものと予測する。
◇内外ともに強材料が支配的
ポジティブな材料に関しては、昨年11月中旬以降、減少傾向に転じた国内在庫量は、直近では480万バレル減の4億1040万バレルと、18年10月以来の低水準となった。多くの地域で移動が正常化し需要が改善する中、欧州の大手エネルギー会社は新たな石油・天然ガスプロジェクトへの投資を減速させおり、内外で需給逼迫(ひっぱく)の要因がリンクする形となっている。
また、市場は地政学的緊張に敏感になっており、直近でもウクライナ情勢のヘッドラインに対して原油市場のベーシス(現物価格―先物価格)が逆ざやを拡大させる動きを見せている。
地政学的リスクはスポットを、他の内外需給逼迫(ひっぱく)要因が原油市場のボトムの強度を増す構図となっている。
緊張緩和から手じまいが加速すれば85ドル台までの反落も考えられるが、現状、価格高騰を大衆が吸収する構造となっており、押し目は拾われる流れが継続するものと考える。
◇投機筋、「時間」の取引で勝機うかがう
現状、投機筋はスプレッド取引の商いにシフトしている。米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉では、昨年12月以降の投機ネット(ロング)とスプレッドの増加率を比較すると、投機筋のセンチメントと方向性がスプレッドに傾いていることが確認できる。
米・イラン核協議や欧州の地政学的緊張など、情勢が刻々と変化する中、期近限月のアウトライト(条件を付けない単体取引)やストラテジーは得策とは言えず、スプレッド、つまり時間を取引するタイムスプレッドを戦略の軸に据えている。
投機筋の動向に関して、前回のアナリストの目(12月28日)では、「~22年は、上述のポジティブな材料を手掛かりに、段階的に新規アウトライトのポジショニングにシフトする可能性も考えられる~」と述べたが、足元の変化の速さ、価格高騰を大衆が吸収する構造などを背景に、しばらくの間はスプレッド戦略主体での取引が続くものと予測する。
現状、ブレント原油とWTI原油に関しては均衡状態にあるが、中東産に関しては、情報を消化するのに手間取り後追い状態が続いている。
引き続き、地政学的な緊迫がスポットを主導し、ファンダメンタルがボトムを引き締める動きが展開されるものと予想する。
出典:時事通信社
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